ある時。
あたしは仕事中、ミスを犯した。
『いくら同じ班の仲間でも、助けてはならない』という掟を破ってしまった。
あたしは、数ある班の中で、ユミコ姉ちゃんが班長を務める班に所属していた。
あたしは6歳になり、班員でもかなり年下の方だったが、誰よりもすばしっこく、ターゲットを盗んでいた。
班員の中には、5歳のミヤがいた。
あたしが風林寺家に来た時、指導係はユミコ姉ちゃんだったけど、ミヤは違った。
ミヤの指導係は、班員のことを自分より先に考えているユミコ姉ちゃんと常に対立していた、タケオだった。
タケオは中学生のユミコ姉ちゃんより年下のくせに、生意気で自己中で、決して人のためにはならない人だった。
指導係になったものの、タケオはミヤのことなんて全く考えていなかった。
わけのわからぬまま、ミヤは初めて盗みを働く現場へと来たのだ。
あたしは最初ユミコ姉ちゃんに手を引かれ、守ってもらっていたから、何も問題はなく帰れたけど。
タケオは決してミヤの手を引いて案内などしなかった。
右往左往しながら敵が撃つ拳銃などを奇跡的に逃げていたが、ついにミヤは立ち止まって泣き出してしまった。
『立ち止まったり泣いたりした班員は見捨てること』という掟があったけど、あたしは無視してミヤを助けた。
ユミコ姉ちゃんはすぐにあたしに気が付き、「ミヤを置いて逃げなさい!」と叫んだけど、あたしは無視して、ミヤを家まで帰らせた。
嘘をついてはならないから、ユミコ姉ちゃんはあたしがミヤを助けたことを、素直に報告した。
あたしは仕事ができ、おじさんおばさんからよく褒められていたので、叱られただけで、殺されることはなかった。
しかし、ミヤは殺された。
『初心者の指導係は、最初に手を引くこと』という掟を破った、タケオも殺された。
あたしは寝る部屋で、ひたすら泣いていた。


