「じゃああたしも、どろぼうの仲間なの?」
「この家に住んでいる子どもは、皆そうよ。
近所ではこの家で育てられた子どもが市長だって言われているけど、実際は市長じゃないの。
この家で育てられた子どもは、やがて立派な大泥棒になるわ」
「あたしも、いつかなるの?」
「皆が皆、必ずしもなるわけではないわ。
子どものうちから、多くのモノを盗んだら、ポイントがもらえるの。
ポイントが目標点を超えたのなら、この家を抜け出せるわ」
「じゃあ、早く抜け出そうよ」
「ミウは出来るけど・・・あたしは無理よ」
「どうして?」
「あたしは班長なの。
班長はどれぐらいポイントを貯めても、一生抜け出せないの。
唯一抜け出せる方法は・・・死ぬしかないわ」
そんなっ・・・!
「ちゃんと仕事をしなかったら、殺されるわ。
ヨシオくんみたいに、盗みに行った先で殺される場合もあるし、おじさんやおばさんによって殺されるケースもあるわ」
「おじさんとおばさんが?」
「そうよ。
しかもこの家では、食料がないの。
ミウは説明をしていなかったから、さっき子どもにご飯をあげちゃったけど、本当はあげてはいけないの。
あげたのなら、ミウは何も食べれない」
だからユミコ姉ちゃんは、あんなに悲しい顔をしていたんだ。
「生きたいのなら、しっかり盗んで、ご飯は1人占めしなさい。
あたしは今日特別にミウの手を引いて誘導したり、ご飯を渡したけど、これからはそんなことしないから。
自分の身は自分で守りなさいね」
「・・・うん」
あたしはその日から、立派な泥棒になるため、訓練を繰り返した。
拳銃の弾の避け方、音のしない走り方。
全ては、生きるため。


