† トータル †








「これで良ければ、食べる?」


2人はパアッと表情を明るくして、あたしからお茶椀を取り、食べ始めた。



「ミウ・・・良いの?」

「構わないよユミコ姉ちゃん」



あたしは笑顔で言ったつもりだけど、ユミコ姉ちゃんは凄く悲しそうな顔をしていた。





あたしたちは部屋へ戻り、ユミコ姉ちゃんから話を聞いた。



「ミウ、この家はね、古くから名家と言われているのよ」

「名家・・・」

「そうよ。
おじさんやおばさんはね、あたしたちのように、身寄りのない子どもを引き取って、ある職業のプロに育てようとしているのよ」

「ある職業?」

「泥棒って言えば、わかるかしら?」

「どろぼう?」

「多くの人から、その人の大切なモノを奪う仕事よ」

「他の人のを奪っちゃうの?
いけない仕事じゃないの?」

「警察にばれたら、捕まるわね」

「どうしてそんなこと、しているの?」

「わからないわ・・・。
おじさんもおばさんも、子どもの頃からそうやって育てられたんですもの。
昔から決められたことだったから、どうしてかは、わからないわ」

「ユミコ姉ちゃんも・・・どろぼうなの?」

「そうよ。
さっき、ビルに入ったじゃない?」

「うん」

「あのビルの社長さんは、悪いことを沢山している人なの。
悪いことの証拠を、さっきあたしたちは盗み出したの。
盗むってことは、悪いことよ。
人のモノを奪うんだからね」