「私にもわかるよう教えて?」



美果は根っからの機械音痴だ。

小学生から愛用している2つ折りの携帯電話も、いまだ使いこなせていない。

メールと電話だけの機能しか使っていない。




「あの防犯カメラは、体温を感知します。
何故かをご説明しましょう。

防犯カメラに映った映像は、全体が青いのです。
青い時、温度は大抵平均体温より低いのです。
平均体温の時は、大抵赤っぽい色をしていますからね。

青の画面の中に、突然赤が現れたら、変に思いますでしょう?」

「うん」

「青い画面を、ハッキングによって赤くしてしまうのです。
そうすると、赤い画面に赤が映っても、違和感はありません」

「そうなんだ!」




カチャッという音と共に、ハッキングが終了する。

美果はこの時に見る、織子の満足そうな顔が好きである。




「通れるの?」

「ええ、ばれないはずです」

「この先、暗証番号あるんだよね?
どうやって解除するの?」

「杏奈が作ってくれた機械を使います」




2人が通ろうとした途端。




「この先は行かせないよ?」



淡々とした焦りのない声に、2人は驚いて振り向く。