☆織子side☆
・・・今でも覚えている。
「オリちゃん」
そう呼んでくれた兄の存在を。
名は確か・・・トモヤと言ったか。
よくは・・・覚えていない。
暫くして、ボクは兄と父と別れた。
着いたのは、小さいアパート。
古びていて・・・隣の部屋の声が聞こえるほど、壁は薄い。
母親、と呼べる人物は、常に遅く帰宅した。
そして、必ず泣いていた。
ボクはお母さんがいない昼間を、ずっとパソコンをいじって遊んだ。
昔、お母さんはボクにパソコンを与えてくれた。
お母さんと一緒に家を出た時、お母さんが持って行ったものだ。
ボクは次第に使い方を覚え、ハッキングまで出来るよう使えるようになった。
イオが生まれたのは、この時。
イオは瞬く間に名を世界にまで轟かせていた。
天才ハッカー、として・・・。
ボクはふと思う。
お母さんと、まだこのアパートに着く前、夜の街を歩いていた時、出会った女の子の存在を。