「烏丸さん?」

「あ、ごめん。考え事しちゃった。」


「烏丸さんが学校来て、総長を癒してあげてよって話。芸術棟は不良だらけだけど、俺ら皆、いつでも大歓迎だよ。」



あ、そっか、不登校設定か。


「えっと……挑戦してみるね。」




うん、と高橋は微笑んだ。



見た目はヤンキーっていうよりチャラ男な高橋君は、怖くない。


ヤンキーは怖いよ。





でも、今日、話した西の人達は皆優しかった。


それは“総長”と“副総長”のお客さんだからだろうけど。


少し、楽しかったな。









「家ってこっち?」


「あ、うん、そこの路地通って……」




目の前には、ビルと家の隙間の細い路上がある。


西ゾーンからはこの路地を通ると早く家に着くと、中学校時代に発見したんだ。


さて通ろうと一歩踏み出すと、ぱしっと腕を掴まれる感覚。







「高橋君?」


「……烏丸さん、こんな所夜通っちゃダメだよ?!昼でも危ないよ?!」



……危な……い?




「ここはね、東と南と西と……どこの校区にも比較的行きやすい場所の路地。だから不良はここ、避けて通ってるんだけど、その代わり変質者が出没します。」





・・・・







「ええええ?!ずっと通ってたよ?!中1からずっと無事だよ?!」



そもそもそれ初耳だよ?!



「奇跡だってそれ!」



取り敢えず明日からは違う道を探そう。


今まで被害に遭ってないし、これからも遭わないと思うけど、聞いちゃったら怖いものね。