「とりあえず、初伊ちゃん。」
東麻君は腕を組みながらハァーと深いため息をついた。
あ、最早その顔を見るだけで何が言いたいか分かる。
《呆れた》って顔だね……。
「さっきから散々押し倒されたり服破かれたり、女子の危機的なものに襲われたよね。」
はい、と静かに返事をする。
てゆーか……やったのは東麻君だけどね。
やった張本人に怒り口調で注意されるというこのおかしな状況。
でも反論したら面倒なことになると本能が告げてるから黙って話を聞こうじゃないか。
「男の前で目ぇ閉じるなんて、キスしてって言ってるようなものだよ。」
「いやっ、そうじゃなくて私はただ恵に嘘を悟られまいと……。」
「初伊ちゃんはもっと警戒心を持って。西巴君と言う名の狼に即食べられるよ。」
そう諭す東麻君。
なんか……抗いにくい口調といい、論理的に諭す姿といい……
「お母さんみたい……。」
あ、でもうちにはもう橘と言う名のおかんがいるから……姑さんポジションかな。
嫁姑合戦にならないように注意だね。
卵焼きは甘い派かしら、しょっぱい派かしら、おほほほ……なんて妄想の世界に若干飛びそうになっていた私を現実に引き戻したのは大きなため息。
「ねぇ……。男にお母さんは言っちゃ駄目。」
若干ブラックぎみの東麻君。
よし、これ以上余計な事言わないように、お口にチャックだ。


