そう思ってたけど、甘かった。
一度愛される事を知ってしまったら、愛されないと物足りなくて。
「ねぇ、エレナちゃん。東でさぁ、イイコトやってるんだ。おいでよ。」
荒んでいた私はある日、偶然出会った東の総長に導かれるまま、東の校舎内の暗い部屋に行ってしまったのだ。
それは、甘い罠。
爆音の音楽の中、その部屋ではルーレットやカードゲームをする生徒達で賑わっていた。
そのゲームで勝てば、負けた奴を下僕に出来て鬱憤できたし、負ければ男に抱かれて一夜限りの甘い夜を過ごすことができた。
勝っても負けても楽しかった。
刺激的な夜に私ははまっていってしまったのだ。
「えれな、俺、もう卒業なんだ。」
「エレナちゃん、俺、もう卒業なんだ。」
前者は愛した人の声。
後者は愛する行為の声。
「俺、陰飛羽を出てもお前のこと忘れないよ。」
「もう総長はやめないといけないから、賭博はもう終わり。楽しかったね♪」
正反対の総長の声。
私の心に残ったのは、後者だった。
「うん、楽しかった。また遊んでね?」
悠河君とは、結局あの日以来ちゃんと向き合えずにいた。
彼と共にいた事の証として残ったのは、“西の姫”という地位だけだった。


