《西凛の宮前えれな》は可愛い、とすぐに噂になった。
それから当時高三の西の総長……悠河君に見初められた。
初めは西の姫っていう肩書きしか興味はなかったけど、悠河君といるうちに本当に彼が好きになっていった。
愛する人と、地位。
大切な物が一気に2つも出来たのだ。
幸せだった。
でも、それはいとも簡単に崩れさったのだ。
『ゆーうがくんっ。』
あの日、私は布団も掛けずにソファーで寝てた悠河君を可愛いと思い、冗談混じりにほっぺをつつき遊んでいた。
『ん……。』
『起きた?布団で寝ないと風邪ひいちゃうよ?』
寝ぼけてか、甘えて抱きついてきた悠河君。
可愛いなぁ、なんて思ってた時だった。
『……カナコぉ……。』
いつも私を呼ぶときよりもずっと優しい声で、誰かの名前を呼んでいた。
夢見心地の彼の顔は幸せそうだった。
なんだ。
えれなの事、好きだとか言っておいて。
ねぇ、それ、嘘だったの?
「なぁ、なんかお前最近俺の事避けてねぇ?」
「え~?避けてないよっ?」
「なら良いんだけどさ。」
私はもう悠河君の事を“恋人”じゃなくて“西の総長”だと思うことにした。
もともと欲しかったのはこの地位だけ。
うっかり悠河君のことを好きになっちゃった、それを辞めるだけで元通りになる。


