えれなside
私の家は代々続く老舗旅館だった。
著名人もお忍びで通っていた。
昭和天皇も訪れたとも言われていた。
それゆえ家は凄く裕福で、
一等地に建つ自宅は、まるでお城のように大きかった。
「ただいま帰りました、おじいちゃま!」
「おお、お帰り、えれなちゃん。」
旅館の主だったお爺様は、親戚の子供達の中でも一番可愛かった私に甘くて。
だから沢山のお稽古をさせてもらえたし、着物だって望むままに買えた。
私立の小学校に通って、帰りはリムジンで迎に来てもらっていた。
お爺様の愛情を一心に受けて私はすくすくと育った。
何の苦労も知らないで。
6年生になってから私はお爺様にお願いをした。
「お爺様。えれな、中学校は陰飛羽に行きたい!」
陰飛羽は小さい頃から夢見てた憧れの場所。
自分が特別な女の子だと思ってた私は、陰飛羽に行くことは当たり前なんだと思ってた。
でも返ってきた答えはNO。
今まで、全てのお願いも我が儘も聞いてもらえたから、どうしてダメなの?!と大泣きした記憶がある。
「今は不況でどこも経営難でね……。しかも近所に帝城ホテルが出来てから、客足が伸びなくて、お金がなくてね……。」
才能かお金。
それが校長に見初められないと陰飛羽に行くことが許されない。
6年生の冬、入学が認められたら自動的に届く入学案内状は、待てども待てども来なかった。
それからすぐに、お爺様が亡くなった。
死因は過度の疲労と心労。
その原因は、旅館の借金だった。


