「…う…初伊ちゃん、危ないから今は橘君との抱擁は諦めて?ね?」
「そうだよ。おかんキャラとは言え橘も男、要するに狼だ。危ないからそんなに近づかない。」
何が狼だ!
めぐはただ俺と烏丸の距離が近いのが気に食わないだけでしょ!?
「ごめん……。今酷い顔してるから、あと三十秒待って〜……。」
そういうと烏丸は涙を拭いて深呼吸を始めて。
「25、24、23……。」
何がなんでも烏丸と俺を離したいめぐはカウントをしてる。
しかも一秒がちょっと短いんだよ!
「あの……烏丸?別に何秒でもいいよ……?」
別にこれからなにかしなきゃいけない訳じゃない。
あ、東麻の報復はやらなきゃだけど。
だから烏丸がそうしてたいならいつまででもそうしてればいい。
そう思ったんだけど、烏丸は大きく首を振った。
「今から姫先輩に会わなきゃいけないから、急がなきゃいけないの。」
その時俺の頭の中で、姫先輩=宮前えれなっていう方程式が立つまで五秒はかかった。
だってあまりに予想外な展開だったからだ。
「ほんとに言ってる?宮前えれなはきっと……。」
「……きっとって言うか……うん。姫先輩がスパイだった。」
「まじか。じゃあ……分かってるなら何で行くの?……ぶっちゃけ烏丸が行っても……。」
烏丸は、ある意味宮前えれなの敵だ。
烏丸と顔をあわせるだけで逆上、なんてことも考えられる。
宮前えれながスパイだとわかった今、そいつをどうにかするのは西校の俺やめぐの仕事だから烏丸が行く意味はないだろう。
というか単純に、烏丸に行って欲しくないんだ。


