「本当はね、襲ってって頼まれたんだ。」
初伊ちゃんの心を壊してやりたいんだって、と彼は冷たく告げる。
それは、苛立って言ってるにも聞こえた。
てか襲ってって……。
「姫先輩が……言ったの……?」
東麻君は返事をしなかった。
でも気付いたら、さっきまでしてた筈のセーラー服のリボンが東麻君の手にある。
「美琴先輩、あんたなにして……!」
「蛍は……ちょっと邪魔だね。初伊ちゃんと仲良くなっちゃったみたいだから。」
東麻君は立ち上がって蛍君の方へ行くと、その風貌からは考えられないような回し蹴りをした。
それは思いっきり蛍君のお腹に入る。
「かはっ……!」
「蛍君!!」
東麻君は蛍君の服を掴んで部屋の外に放り出した。
「本当に襲っちゃおうかなって。」
そう言うと彼は、扉を閉めた。
さらにはガチャッと音がしたから鍵まで掛けられた。
逃げろ、逃げろ私。
兎に角隠れようと思うけれどそんな場所を探す時間なんてないし、この部屋を知り尽くしてる訳じゃない。
ソファーからは取り敢えず離れて。
でもくるりと振り返った東麻君とがっちり目が合ってしまう。
「逃げようとしてる?無理だと思うよ。」
「うん私も無理だと思う。だから東麻君が考え直してくれない?」
ジリジリと一歩ずつ近づいてくる東麻君。
背中を向けずに一歩ずつ後退する私。
結果は見えてる。
こうやって下がり続けたら、いつかは行き止まるに決まってる。
案の定、背中に壁の気配がして。
東麻君は追い詰めたとばかりに、私の顔の傍に片手を置いた。


