「あ、そうだ!
僕、ライアンと一緒に行くよ。」

「え?なんでだ?」

「だって、君は足を怪我してるし、僕が運んだ方がずっと早いから。」

「馬鹿、こんなの怪我のうちに入るか。
でも、早く着けるのならそれは助かる。
ここから村までは本当に遠いからな。
金さえあれば馬車に乗れるんだが…」

「ライアン、このお金を持っていってよ。」

僕は、全く気付かずに遣わず仕舞いだった金貨を彼の前に置いた。



「そりゃあ助かるけど……」

ライアンは金貨を見てちょっと困ったような顔をしていた。



「シンファが無事に着いたこと、村の人達に早く知らせてあげた方が良いし、シンファも村の様子も早く知りたいんじゃない?
だから、遣わせてもらいなよ。」

「そうだよ。
アズロの言う通りだよ。
だから、明日一日休んでから出発してよ。」

「おいおい、こんな怪我なんてなんともないって言ってるだろ。」

ライアンはそう言ったけど、さっきのライアンの歩き方を見ていたら、相当痛いんだろうって思えた。
怪我はともかく、きっと、足をくじいたんじゃないかって。



「ライアン…せっかく二人がこう言ってくれてるんだ。
そうさせてもらえ。」

「……わかったよ。
じゃあ、そうしよう。
ここのことも、おまえにいろいろ教えとかないといけないしな。」

ガーランドさんの口添えで、ライアンもようやく納得してくれて、金貨も納めてくれた。



「ライアン、エアリスが来る時にはぜひとも酒を持ってくるように頼んでくれよ。」

「わかりました。
飛びきりうまいやつを持っていってもらいますよ。」



僕達は遅くまで他愛ない会話を続けた。
ここにお酒でもあったらもっと賑やかになっただろうけど、残念ながら味の抜けたようなお茶しかなかった。
それでも僕達の話は途切れることがなくて…

村を出てからずっと抱えてたわだかまりが、まるで嘘みたいに感じられた。