(あぁ、そういえば……)



ある時、僕はライアンに自分の胸の内を話したことがあった。
不安で胸が張り裂けそうになってた頃だ。



「ライアン……もしも、この先、ものが掴めなくなったらどうしよう?
そうなったら、僕はもう食事も…」

「大丈夫だって。そんなことになったら、俺が毎回食べさせてやるよ。
おまえの口までちゃんと運んでやるから心配すんなって。」

「じゃあ……もしも、僕の身体が見えなくなったら?
触れられないだけじゃなく、ゴーストみたいに誰にも見えなくなったら……」

「見えなくなってもきっと話すことは出来るだろ?
話すのに、姿なんか必要じゃない。
何の問題もないさ。」

僕がどれだけ不安をぶつけても、ライアンはその都度笑って答えてくれた。
つまらないことをいくつもいくつも質問して…そしてようやく僕の「もしも」が尽きた時、ライアンはこう言った。



「シンファ…
『もしも』なんてことは考えるだけ無駄だ。
良い『もしも』も、悪い『もしも』も世の中には数え切れない程の『もしも』がある。
だけど、そのうち実現するのはほんの一握りだ。
起きてもいない事をあれこれ考えて神経をすり減らすのは、居もしない化け物を勝手に想像して怖がるようなもんだ。
馬鹿馬鹿しいとは思わないか?
……なんだって、起こってから考えりゃ良いんだ。
おまえに解決策が思いつかなくたって、誰かがきっと良い案を思いついてくれる。
なんたって、おまえにはこの俺がついてるんだ!
心配なんて一つもないだろ?」

そういって、ライアンは僕の背中を叩こうとして、その手がすり抜けバランスを崩した。



「……ライアン…いいかげん慣れてよね…」

あの時のライアンの照れ臭そうな顔といったら……



僕の心の闇は晴れた。
ライアンのお陰で、心がどれほど軽くなったことか。

僕はライアンを兄のように想ってて
ライアンは僕を弟のように想ってくれて…



ライアンは、誰よりも信頼出来る僕の大切な兄さんだった。



……その関係は永遠だと思ってた……