「紅河は何で知ってるんだ⁈」

「………梅の花」

ぼそっと紅河が呟く。

「一輪咲いても梅は梅」

その後を沖田が引き継いだ。

「何それ、俳句?」

藤堂が不思議そうに二人に聞く。

土方の額に更に深い皺が刻まれた。

豊玉節句集。

豊玉もとい土方が書いている節句集である。

豊玉と言うのは雅号で、この節句集には、かなり下手な俳句が載っている。

土方は異常なまでにこの趣味と節句集の存在を隠していたのだが、ばれていた。


「知らん。私に聞くな」

「本人に聞いてみれば良いんじゃないですか?」

「総司………!」

地を這う声で土方が沖田の名を呼ぶ。

「何ですか、ほうぎょ………土方さん」

「総司ぃぃ!!」

土方が手に持った湯呑みを沖田に投げつける。

しかしそれは、あっさりと受け止められた。

更に土方は茶菓子として出されていた団子の、串を投げつけようとして……

「おい。人の部屋で暴れれるな」

紅河に止められる。

「そんなに元気なら仕事くらい、いくらでも出来るだろうな」

「……………は?」

ものすごく雲行きの怪しい成り行きに、土方は部屋を出ようとする。

「あー、書類が溜まってるから部屋に戻る」

しかし、それは無理だった。

戸に手を掛けようとして、何が凄い速さで戸に刺さったからだ。

戸に刺さったもの。

それは先程土方が沖田に投げつけようとした団子の串。

それが三本戸に半分が埋まるくらいに刺さっている。

「紅河。副長に何しとんねん」

山崎が呆れて紅河を叱る。

「人の話は最後まで聞くものだ。土方」

哀れなことに、土方に拒否権は無かった。