三時五分過ぎ、ようやく有馬と健太が練習場に入った。


「練習、お願いします」

 大声で挨拶した二人に内海が歩み寄る。

「お前ら、遅くなった理由でもあるのか?」


「いいえ……特にないです」

「僕も……ないです」

 有馬に続いて健太も答えた。

 その瞬間、内海のビンタが飛んだ。

「バカヤロー! ダラけた気持ちで練習に来るんじゃねぇぞ!」

「す、すいませんでした」

 健太と有馬は口を揃えて頭を下げた。

 内海が諭すように言った。

「いいか、……試合の前になるとなぁ、手を抜いた練習をみんな思い出してくる。そして後悔しながら相手が怖くなるんだよ」


 山本も話に加わった。

「梅ッチがいようがいまいが、自分の練習は関係ねぇんだぞ」


「お前ら、反省したならトットと着替えろや」

 内海に言われて、有馬と健太は慌てて更衣室に駆け込んだ。