その日の夕方、家に帰ると珍しくこんな時間に母親が帰って来てる。
嫌だな………。
リビングに繋がるドアを開けなきゃ部屋には行けないわけだ。
…行くしかない。
ーーガチャ
「おかえりなさい。碧依」
「……ただいま」
「学校はどう?さすがに、もう慣れたかしら?」
「そこそこ」
「も〜……嫌ね。相変わらず笑わないんだから」
悪態ついてくるこの母親。
一応、敏腕内科医の女医らしい。
敏腕って言われるほどだから昔から忙しかったし、俺は一切母親との思い出がない。
「ここ最近ずーっと仕事のせいで疲れちゃったわ〜。明後日からパパとパリに行くから」
「ふーん」
「家に一人だけど大丈夫?心配だから家政婦さん呼ぶわよ?」
「ヤダ。いられたら落ち着かない」
「昔から嫌がったわよね。変わった子」
早くパリでもアメリカでも、どこにでも行ってよ。
親といる家が窮屈だ。

