だけど俺は聞かなかった。
いや、聞けなかった。
隠し事されてることは薄々気付いてたけど、傷付くのが怖かったんだと思う。
……バカじゃん。
それからは、また羽珠との時間は作れなかった。
毎日放課後は参考書や赤本で勉強会。
難関大学の医学部は並の努力と学力じゃ入れないから……。
「ねっ、碧依くん!一緒に帰らない?」
「ん、良いよ」
「やったー♪帰りに、おいしいクレープでも食べよーよ♪」
「ごめん。疲れてるから真っ直ぐ帰る」
「…そっか。また今度だねっ!」
甘党の俺だけど、甘いモノに誘惑されないほど疲労感たっぷり。
羽珠が足りないのに、いつも隣には橘がいる。
おまけに罪悪感もたっぷり。
橘と同じ電車に乗って、アイツの方が先に降りる。
「また明日ね〜♪碧依くん!」
「また明日」
1人で電車に揺られて降りたところで、最悪の状況。
なんで、コイツがいんのさ……。
「碧依じゃん。奇遇〜」
「奇遇なわけない。なんで月都がこの駅にいんの?」
「しょーがないだろー。神木外科部長に挨拶してたんだから♪」
完全に忘れてた……。

