羽珠を送ってから、逆方向の俺の駅に向かって帰る。


閑静な住宅街に佇む無駄にデカイ家。


いつも通り、鍵を開けて入りリビングに行くと今日は最悪な日だ。


「あら、おかえりなさい。碧依」



親が海外から帰国してた。


また羽珠の家に逃げたい衝動に駆られる。


関わりたくないから、母親の言葉にテキトーに頷いて早歩きで階段へ。


早く自分の部屋行っちゃいたい。


「碧依」


願望は虚しく崩れて父親に呼び止められた。


「何?」

「12月24日、空けておけ。これをお前に渡しておく」

「…去年から、いらないって言ってんじゃん」

「今年は来い。息子のお前が来ないと、私の業績に傷が入る」


ぐっと押し出された便箋。


取って便箋を開くと、中には英字だらけのチケットが2枚。


今年はもう逃げられないな。


「行く相手は婚約者とゆう決まりがある。……知ってるよな?」

「うん。分かった、行く」

「変に物分りが良いな」


怪しく笑う父親を背に部屋へ行く。



あのさー……俺が素直に婚約者と行くと思う?


そんなこと絶対にしないから。