窓の外ではとうとう雨が降り出したようで、静寂の廊下にその音だけが響く。


──お願い。もう誰も連れていかないで…!


 その時、ランプが消え、医師が沈痛な面持ちで扉から出て来た。


「晴流はっ!?」


 一礼する間もなく雪姫はすばやく詰め寄った。咲季に窘められるが、譲らない。


「…出血は多いものの、何とか一命を取り留めました。じきに目覚めるでしょう。」


 その言葉に全員がホッと胸を撫で下ろした。


「よかった…本当によかったぁ…っ」


 琥太郎は安堵し過ぎてボロボロと泣き崩れている。クラスは違えど面識はあるのか、灰原にひしっと肩を組まれ慰められていた。















 関係者の話によると、晴流は隣町にある西沈橋で倒れていたらしい。


通報者は不明。目撃者もいない。


 唯一分かっているのは、腹部に果物ナイフのようなもので刺された傷が三つあったということ。


 一瞬脳裏を過ぎったのはあの通り魔の存在。


──まさか。でも…。


 今は混乱していて考え出すとキリがなかった。