─7月28日─



 大会に備え雪姫達バスケ部は練習に励んでいた。一応空調が効いているとはいえ、真夏の体育館はかなり蒸し暑い。


 Tシャツの袖を肩まで捲り上げてパス練習をしている雪姫に、ペアの子が話しかける。


「ねーねー、今日もお兄さん迎えに来るの?」


「うん。」


 通り魔事件に遭って以来、晴流は部活への送り迎えをするようになった。ほとんど電車移動だから平気だと言ったのだが、心配して聞く耳も持たない。


──まあ、嬉しいんだけどね…。


 ただ一つ面倒なのは毎回来るせいで目立っていること。雪姫自身もそうだが、晴流が。


「天城さん、今度あたしのことお兄さんに紹介してくれない?」


「…はぁ…」


 二人は中性的な顔立ちだ。雪姫は長身も相まって男に間違われるだけなのだが、晴流はやたらとモテる。中学時代も大変だったが、まさか高校でもせがまれるとは思わなかった。


「ま、また今度…」


 とりあえず苦笑するしかない。


 練習を再開しながら、雪姫はふと思った。


──そう言えば晴流、最近変なんだよね…。