ボールが床で弾むのと同じタイミングで、見計らったかのように試合終了を告げるブザーが鳴った。


 バッと皆の視線がコートから得点ボードへと移る。接戦だった。点差は僅か1点。そしてその1点を制したのは──


「……勝っ、た……?」


 雪姫は肩で息をしながら呆然とその結果に見入っていた。まだ現実味が涌かなくて、どこか夢見心地で。けれど号泣するチームメイト達に次から次へと抱きつかれ、曖昧な感情はやがて明確な輪郭を持った喜びへと昇華していった。


「──優勝は〇〇県市立爽北中学校!!」


 高らかな宣言と共に巻き起こった割れんばかりの拍手喝采。それは先程までの声援の比ではなく、身体が痺れるくらいに激しく会場内の空気を震わせていた。


──ああ、勝ったんだ。優勝したんだ、わたし達……。

    .
 それは彼との、そして同じ傷を負った友人達との約束。


 この大歓声の中では言葉は届かないだろうと思い、雪姫は代わりに拳を掲げた。まっすぐと、天に向かって突き出すように。


 そしてそれは確かに伝わっていた。少なくとも、観客席から見守っていた2人の友人には。