勢い良く立ち上がり、元来た道を再び疾走する。脚が千切れるんじゃないかと思うくらいに速く、走って走って走り抜けた。


──怖かった。


 このままじゃ大好きな二人が居なくなってしまうと思うと、怖くて怖くてたまらなかった。


 先程よりもぬかるんで登りづらくなっていた土砂の山を越えると、後を追ってきた係員の姿があった。


「あ、君!勝手に出ちゃ…」


「助けて!!」


 言葉を遮って、雪姫は力いっぱい叫んだ。


「二人が川に流されたの!!お願い助けてっ!!!」


「!?わ、分かった!」


 それを聞いた係員は捜索依頼をするためにコテージへと駆けていった。


──お願い晴流、斗真、死なないで。居なくならないで…


 伝えたことにより堪えていた感情が一気にこみ上げてくる。力尽きた雪姫は斜面を滑るように地面に落ちた。


「雪姫!」


「雪姫ちゃん!!」


 事態を知って慌てて出てきた奈々と琥太郎。その時にはもう雨は弱まり、空が白んできていた。