鷺沼は目の前に立つ雪姫を改めて見つめる。恐怖も怒りも絶望も抑え込みただ1人気丈に振る舞う少女。今から彼女により残酷な話をしなければならない。
「……今回の事件で予想はしていると思うけど、君達2人にも被害が及ぶ可能性が高くなった。今後の対策を決めなければならないから、悪いけど一緒に署まで来てもらえるかい?」
「はい。」
犯人の手が晴流に止まらず奈々にまで及んだ。それはつまり、復讐の対象があの事故に関わった4人全員だということ。
恐らくかなり行動を制限されるだろうが、雪姫としてもせめて琥太朗の身の安全は確保したいところ。言われずとも従うつもりだった。
「……あれっ、そう言えば今日はもう1人の刑事さん居ないんですね。いつも一緒なのに。」
冷静に頭を働かせる中で雪姫は不意にそんなことに気づいた。当然来ていると思っていた白髪混じりの刑事がどこにも見当たらないのだ。
それに対し鷺沼はああ、と軽く説明する。
「鳩山さんは別行動。なんでも1年前の事故について気になることがあるらしくて、2日前からちょくちょく出掛けてるんだ。」



