その日から尚は、今まで以上に私にべったりするようになった。
「あのね、私一人でいけるから。」
無理やり自転車の後ろにのせようとする尚を睨みつけると、それに気づかないかのようににっこりと笑った。
「はやく乗れ、じゃないと一緒に歩くぞ。
どうせ一緒なら早い方がいいでしょ。」
………。
こうやって無理にでも言うことを聞かせるところが憎い。
仕方がなく背中につかまった私は、ため息をついた。
あーもう、いい匂いすぎだっての。
尚の家の柔軟剤の柔らかい香りは、昔から変わらない。
一瞬塗り替えられるのは、彼女とあった後だけ。
それが私にはすごく辛いことだと、この男がいつか知る日は来るのだろうか。
「風が気持ちいいな〜!」
「…そだね。」
…こないと思うんだよね。


