「俺のことちゃんと見てよ、ね?
…いいでしょ、俺とのキス。」
「やだっ…尚…!」
赤く染まった横井君の顔が、だんだん近づいてくる。
やだ、やだやだやだやだっ!
触れるか触れないか、見てられなかった私はギュッと目をつむった。
そんな時。
いい香りがふわりと、が一瞬横切ったかと思うと、次の瞬間には鈍い音が辺りに響いた。
「凛に気安く触るな。」
「な、尚?」
パッと目を開けると、目の前には見慣れた広い背中、その前には頬を抑えて横井君が転がっている。
「…っ、澤田が富岡さんを縛り付けるから富岡さんは自由にならないんだろ!」
「あ?そうだけど、それが?」
「富岡さんが困ってることに、どうして気がつかないんだ!」


