もうひとつのエトワール


ランチのあとは、常連さんが面白いから是非と勧めてくれた映画を観に行って、駅ビルに新しくできたパン屋を敵情視察がてら覗いたついでに、同じビル内のテナントをいくつか巡って、最後はスーパーで夕飯の買い物を済ませて二人揃って彰良のアパートへと帰宅した。


「うわー、彰良の部屋来るのいつぶりだっけ?全然変わってないね。相変わらず男の部屋とは思えないくらい綺麗」

「先々月の終わり頃に来て以来だな。それに、男の部屋は総じて汚いってのは偏見だぞ」


買い物袋を持ってキッチンに向かった彰良が、しばらくして二人分のカップを持ってやって来る。


「とりあえず、晩飯作る前に休憩な」


この部屋に来たときの定位置である、ソファーを背もたれに床に直接腰を下ろした菜穂の隣に、彰良も並んで腰を下ろす。

差し出されたカップの中では、真っ黒い液体が揺れていた。


「菜穂は、砂糖もミルクもいらないんだったよな」

「うん、ありがと」