もうひとつのエトワール


いつぞやと同じようなわざとらしい驚き声にジト目で視線を移し、「誰が食うか、この天然ボケボケ娘を」といつぞやと同じセリフを先制で返してやる。


「あっ、ひどいです菜穂さん!私、ボケボケじゃありません」


また“天然”を否定し忘れていることはスルーの方向で、棗は真希を扉へと誘う。

今日もまた、服装も髪型もバッチリキメた棗は、扉を開けて真希に先を譲りながら顔だけで後ろを振り返った。


「じゃあ菜穂、あとはよろしくな」


さっさと行けとばかりにヒラヒラ手を振って見せると、程なくして扉がカランカランと音を立てて閉まる。

誰もいなくなった店内で売り上げをきっちりとノートに記してから顔を上げると、何気なく視界に入った時計を見上げて小さく呟いた。


「彰良……仕事終わったかな」