「天然ボケボケ娘が相手じゃ春はまだまだ遠そうだけど、棗は本気で頑張ってるみたいだし、いつかはそうなれるかもね」
時折かましてくる真希の天然に振り回されながらも、棗はめげないアプローチを続けている。
そんな兄の姿もまた、菜穂にとっては眩しい。
「じゃあ俺も、また菜穂が不安になったりしないように頑張らないとな」
抱きしめていた腕がスッと離れて、菜穂の隣で彰良はソファーに背中を預ける。
視界が開けると、とっくに湯気の消えた二つのマグカップが見えた。
「これからはなるべく、好きだよって言葉にするところから始めるか」
「あんまり連発すると、特別感がなくなって軽く聞こえるよ」
天井に向かって呟いた彰良の言葉に笑いながらツッコミを入れると、「それもそうか」と素直な返事がきた。
グッと体を起こしてテーブルに手を伸ばすと、カップを手に取ってすっかり冷めたコーヒーに口を付ける。



