もうひとつのエトワール



「なあ菜穂、そろそろ顔上げない?表情が全く見えないのは俺的に淋しいのですが」

「却下」


赤くなっているであろう顔を見られるのが恥ずかしくて、背中に回した腕にギュッと力を込めて、彰良の胸に顔を埋める。

そんな照れ隠しなど見通したうえで、彰良は仕方なさそうに笑った。


「そういえばこの間、棗が女の子と並んで歩いているのを見た」


唐突な会話の始まりに思わず顔を上げると、「おっ、やっとこっち見た」と彰良が可笑しそうに笑う。


「随分楽しそうだったけど、棗にもついに春が来たのか?」

「いや、その子は……」


最近よく店に来るようになった、自分とは真逆のいかにも女の子らしい女の子。

どこかふわふわしていて、つい守ってあげたくなるような雰囲気を漂わせていて、笑った顔がとても可愛らしい彼女は……雨の日に棗が偶然見つけた女の子は、自分が密かに憧れていたものをたくさん持っている、とても眩しくて羨ましい存在。