「俺は、菜穂が好きだ。ほかの誰でもない、菜穂が好きだから付き合いたいと思った。菜穂も……同じ気持ちだから、俺と一緒にいてくれるんじゃないのか」
ようやく唇を離した彰良が、息がかかりそうなほど近くで囁く。
その声も顔にも、先程までの怒りは微塵も感じられなくて、いつの間にか寂しげな、どこか悲しげな表情に変わっていた。
すぐ目の前にあるその顔に、微かに開いた唇が震える。
「あたし……ふわふわのスカートとか似合わないし、甘いものも好きじゃないし、女の子らしく可愛く笑えないから、だから……」
頭の中に何度も浮かんでくるのは、街を歩くスカート姿の女の子や、生クリームやフルーツがたっぷりのケーキ、それから……真希の可愛らしい笑顔。
話すごとに声が震えて泣きそうになり、その顔に一瞬驚いたように目を見開いた彰良から顔を背けると、両脇についていた手がそっと背中に回されて、引き寄せられるように優しく抱きしめられた。
泣きそうに歪んだ顔が彰良の胸元に押し付けられ、その温かさにまた涙腺が緩む。



