甘いものがあまり得意ではない菜穂が飲むのは、いつも決まってブラックコーヒー。
受け取ったカップに口をつけると、独特の苦味が口の中に広がって、その苦味が美味しいと感じてしまう自分に心が沈んだ。
甘いものが好きで、ブラックのコーヒーは苦手な方が、きっと女の子としては可愛らしい。
「菜穂さ」
ふと顔を上げると、丁度こちらを向いた彰良と目があった。
「レストランで、なんで付き合ってくれてるのかって聞いたよな」
あの時の一瞬だけ見せた不機嫌そうな顔を思い出し、「そんなこと言ったかな」とはぐらかしにかかるも、彰良は乗ってはくれなかった。
「付き合って“くれてる”ってなんだよ。俺は、菜穂と付き合ってあげてるなんて思ったことは一度もないし、菜穂がそんな風に思うような扱いをした覚えもない」
自分が思っていたのとは少しずれていた怒りの理由に、思わずキョトンとした顔で沈黙すると、それをどう受け取ったのか彰良の眉間には見間違いようのない皺が刻まれた。
「俺の何が菜穂をそんなに不安にさせたんだ?」
「いや、彰良が悪いなんてことは全然なくて……」



