忘れた

「あーずま」


ふいに、背後から声をかけられた。


ゲッ、男子だ…


見るとそこにいたのは、同じクラスの男子だった。始業式のとき、ちょろっと話した人だ。


彼は自転車を押して、あたしの隣に走ってきた。


くしゃくしゃの黒髪に、キリッとした目。あたしよりも少しだけ、背が高い。


えーっと、名前なんだっけ。


「大縄、大変だったな」


あたしは必死に頭を回転させた。確か、早何とかくんだったような…


「まあ、色々言う奴はほっとけ。あいつら心が狭いんだよ」


早瀬、早川、早見…


「しっかし、東は本当鈍臭いのな」


「早水ッ! 早水だッ」


思い出した。クラス替えのすぐ後、やけに馴れ馴れしく話しかけてきた人だ。


まあ早水は誰にでもそういう態度なんだけど、あたしが無視するから話しかけに来なくなったんだった。