梨沙のやつ、何してんのよ。男の人ばっかりの中に残された身にもなってよ。


待ってるだけというのも気が引けたので、あたしはかおりさんの手伝いをしようと部屋を出た。


ところがリビングキッチンには、かおりさんの姿は見えなかった。


あれ、どこに行ったのかな?


ウロウロしていると、隣の部屋から女性の声が聞こえてきた。


「…それは聞いたけど、あたしが行くのはおかしいでしょ?」


かおりさんだ。電話で誰かと会話しているとみた。盗み聞きするのは悪いな。


あたしがその場を離れようとした時。


「…でもゆうすけくんは…」


ゆうすけ?


思わず立ち止まるあたし。


「…何年も会ってないんだし、今更行っても…え? 記憶喪失?」


ドクン、とあたしの心臓が跳ねた。


記憶喪失なんてそう簡単に起きる現象じゃない。かおりさんは、あの勇介の元カノだ。間違いない。


うそ。あんな可愛らしい人のことで頭がいっぱいの勇介に、あたしが入る隙なんてないじゃない。


…帰ろ。


あたしは元来た部屋に戻って、急用ができたと嘘をついた。


「もう外暗いし、家まで車で送るよ」


そんなあっくんに甘え、あたしは早々にマンションを後にした。