忘れた

2階の窓から顔を出して、ひんやりした風を肌に感じながら、待つこと10分。


勇介の車が現れた。


ドアが開いて出てきたのは、白のTシャツにジーパン姿の長身の男性。勇介だ。


「勇介ッ」


あたしは急いで階段を駆け下り、玄関を突っ切って、彼の元へ。


「仕事は? 今日あるんでしょ? いいの?」


「今日は遅刻する。もう連絡したから」


そう言って、勇介はぎゅっとあたしを抱きしめた。優しい温もりがすっぽりと体を包み込む。


「会いたかった」


勇介があたしの耳元でささやいた。勇介の息が耳に触れる。ドクン、と心臓が跳ねた。


「俺、これからは、毎日会いにくるよ。仕事があるときは、その前に。

その早水って奴に奈緒をとられたくない」


ささやき声で勇介は言った。


「でも、そんなことしたら勇介が大変になっちゃう。悪いよ」


「こんな近くに住んでんだから、大変もクソもねえ。車で10分足らずだぞ?」


「でも…」


すると勇介の腕があたしから離れていくのを感じた。