最近、哲が優しいのには理由がある。
「あ、これ美味い」
なにこれゴマ油? とご飯を頬張りながら言う哲を背後に、あたしは小窓を開けた。
午前練が終わると殆ど毎回ここに来る哲は、昼ごはんを食べて昼寝をして課題を少しずつ進めて、家に帰る。
…南雲さんは良いのかな。
でも聞かない。夏休み前にその名前を出したら不機嫌になった。それから人生初といっても過言じゃない。哲があたしに謝った。
人が彼女の話をするのを嫌がるくらい溺愛してるんだ。少し嬉しくて、少し羨ましい。
もしかしたら先輩が炭酸水の彼女さんの話をされるのもそういう心境で避けたいのかもしれない、と思い当たる。



