あたしはまだその場を動かないでいた。

汐野くん、今の子だれ? もしかして双子とか?
違う、幼馴染み。
帰ってくるって?
うちに住んでたから。

哲の返答が耳にまで届く。地獄耳を侮るなかれ。

あたしは自分の行くべき方向へ向き直る。呼び出し時間から、優に二十分は経っていた。

空き教室へ行くと、誰もいない。

それはそうだ。二十分も遅刻してくるなんて、怒るしムカつくだろう。だったら自分から会いに来れば良いのに。

そんな価値はないって、決めつけられているんだろうな。

扉を占めて、教室で一人になった。

昨日、哲の家を出た。