グレープフルーツを食べなさい

「……月並みな質問ですが、それ本当に鳴沢さんの子どもだったんですか?」

 それまで、ただ黙って私の話を聞いていた上村が、そんなことを聞いてきた。

 ここまで一気に話して喉が渇いた私は、今度は自分でウーロン茶を頼んだ。

「それは間違いないみたい。よくよく聞いたらその時は彼も結構酔っ払ってたらしくて、身に覚えなくはないっ
て」

「なんですかそれ」

「ホントよねぇ」

 普段から落ち着いた表情を崩さない上村が眉間に皺を寄せるのを見て、思わず私は吹き出してしまった。

 私につられたのか、上村の表情もすぐに緩んだ。


 ……なんだか、おかしな感覚だった。

 当時はあんなに悩んで苦しんだのに、今の私はあの時のことを上村と笑って話せている。