グレープフルーツを食べなさい

「素敵です。カフェもクリスマスツリーも」

 壁一面の蔦はそのままに、屋根はキュートな赤色に葺き替え、大きな鉄製の扉はぬくもりを感じる木製のものに変えられている。そしてその扉のすぐ横に立つ立派なもみの木が、贅沢に飾り立てられていた。

「石蔵だから、この中夏は涼しいんだけど、冬場は寒いんだ。それで中に大き目の薪ストーブを設置してる。それがまたドイツ製の味のあるやつでさ。オーナーは50代の女性なんだけど、夫婦で音楽好きらしくて、ライブスペースも設けてあるんだ。実は俺がアイデア出したんだけど、友人が提案したらすごく喜んでくれたらしくて。さっそくオープン日にクリスマスライブをやることになったんだよ」

「そうなんですか」

 普段は落ち着いている岩井田さんが子供のようにはしゃいでいる。

 興奮して話す彼の周りに白い息がまとわりつく。降り続く粉雪が、クリスマスツリーを白く染めはじめていた。

 華やかなクリスマスパーティの様子が目に浮かぶようだ。私にまで、彼の楽しさが伝染してきたみたいで、自然と笑みが零れた。