グレープフルーツを食べなさい

「お先に失礼します」

「あ、三谷くんお疲れさま」

 まだ一人デスクに残る部長に声をかけ、オアシス部を後にした。

 週の半ば、思いがけず仕事が早く片付いて、珍しく暗くならないうちに会社を出ることができた。

 今日は母は検査があるとかで、お見舞いはご遠慮ください、と担当の看護士に言われている。結果は明日お知らせしますから、と。

 会社を出ると、雪でも降りそうなどんよりした灰色の空が広がっていた。

 ――鞄に折り畳み傘、入れてたっけ。

 ぽっかりと空いてしまった時間も、一人では持て余してしまう。賑やかな冬の街を見ていると、このまま家に帰るのをもったいなく感じた。

 ……こんなことなら、響子の誘いを断らなければよかった。

 最近、社内にいい感じの人がいて、クリスマスプレゼントをあげたいから買い物につきあって、と言われていたのに。

 誘われた時は残業続きで、つい「そのうちね」と言ってしまった。