グレープフルーツを食べなさい

「うん、先ほどご挨拶させてもらったよ実はこれからデザートの試食をさせてもらうんだ」

「わあ、いいですね。私達もお願いしてみようかな。ね、上村さん」

 親しげに上村に話しかける麻倉さんの姿に、胸がチクリと痛む。

「うん、まあ……とりあえず、俺らも席に着こうか」

 少し前から、ホール担当の女性がすぐ側で待機していた。上村が女性とアイコンタクトを取ると、それに気が付いた麻倉さんが上村の腕を取る。

「それじゃあ失礼します」

「ええ、また……」

 私は黙ったまま、二人が奥の個室に案内されるのを見送った。あれは、前に私と上村が一緒に食事をした席だ。

「驚いたね、あの二人プライベートでもここに来てるんだ」

「え、どういうことですか?」

「あれ、三谷さんは知らないのかな。上村くん、ここの契約取るのずいぶん苦労してたでしょう」

「ええ、……それは上村から聞いてます」

 あの時、上村は珍しく私に弱音を吐いた。と言ってもほんの一瞬だけだったけれど。