グレープフルーツを食べなさい

「えっ、……ここですか?」

 その後、岩井田さんが私を連れて向かったのは、『リストランテHira』だった。

 以前、上村が私を連れてきてくれたレストランだ。このレストランはオアシスタウンに入ることが決まっていて、上村の担当先でもある。

「そう、ここの担当の上村くんからすごくいい店だって聞いて、一度行ってみたかったんだ」

「そうなんですか……」

「どうしたの、三谷さん。イタリアンは苦手?」

 不安気に私を覗きこむ岩井田さんに、慌てて両手を振る。

「いえ、大好きです。ただ一度来たことがあったんで、ちょっと驚いて」

「そうなんだ。……まあとりあえず、入ろうか」

「はい」

 今目の前にいるのは岩井田さんなのに、上村のことを思い出して一人沈むなんて失礼だわ。今日は純粋に食事を楽しもう。

 私はそう気分を切り替え、店に足を踏み入れた。