グレープフルーツを食べなさい

「実は食事に行く前に三谷さんに見て欲しいものがあるんだけど」

「何ですか?」

「それは……まあ、行ってからのお楽しみ」

 コーヒーを飲み終え喫茶店を出ると、岩井田さんはさらに通りの奥へと進んでいく。途中で角を曲がり一つ奥の通りに入ると、ようやく岩井田さんは立ち止まった。

「岩井田さん、ここは?」

 そこは、古い石造りの蔵のようだった。繁華街の近くに、こんな建物が取り壊されることもなく残っているなんて。

「三谷さん、ごめんね。仕事の話はしないって言ってたんだけど……。来週から工事が始まっちゃうから、その前に一度、三谷さんにも見てもらいたくて」

「工事? ここ、取り壊されちゃうんですか?」

「いや、カフェに改築するんだ。前に話した建築をやってる友人のこと覚えてる? そいつがここの担当をしてるんだ」