グレープフルーツを食べなさい

「三谷さん、岩井田さんの帰社時間ってわかります?」

「あ、今日はね――」

 後輩に話しかけられて、ようやく意識が仕事に戻る。

 こんな、自分は嫌だ。こんなふうに人を窺ってばかりの自分は。

 自分で蒔いた種なのに、息が詰まりそうだった。



「え、明日ですか?」

「うん、空いてないかな」

 定時後、どうしても今日中に確認してもらいたい書類があり、私はデスクでずっと岩井田さんの帰社を待っていた。

 金曜日の午後7時。もうオフィスには私と岩井田さんしかいない。

「この間のお詫びと言ったらあれだけど、食事でもどうかなと思って」