グレープフルーツを食べなさい

「あれはねー、うちを担当してるコンサルの麻倉さんって人」

 何でもないことのように響子に教える。だって響子は、他人の恋愛沙汰が好きだから。

「それじゃあ、取引先の人ってことですか?」

「そう、今日あそことの打ち合わせ、予定に入ってたかな」

 それとなく仕事を匂わせてみる。でも、響子には通じなかった。

「でもあの女の人、やけに距離近くないですか?」

「そうかな」

 確かに、そういう風にも見える。まるで、仕事の合間に待ち合わせた恋人同士のように。

「やー、どうしよ。ちょっとワクワクしてきちゃいました、私」

「響子ダメよ、憶測でものを言ったりしたら」

 いつも先走る響子をたしなめた。響子に限って、言いふらすようなことはしないと思うけど。