グレープフルーツを食べなさい

「何よその顔。せっかくの美人が台無しよ」

「三谷さーん、どーして上村くんのこと帰しちゃうんですか? せっかく久しぶりに三人揃ったのに……」

 響子もどうしてそこまでこの三人に拘るかな、って思うけど。

 厳しい新入社員時代を一緒に乗り切ったメンバーだから、彼女なりに、特別な思い入れがあるのかもしれない。

 ……そう考えたら、響子のことがなんだか余計に可愛く思えた。

「まあ響子はそう言うけどさ、響子も見たでしょ? 美奈子のあの顔」

「……見ました」

 そう言うと、響子は堪らずブッと噴き出した。

 外食事業部の女の子たちは、美奈子に掌握されていると言っていい。

 美奈子の機嫌次第で私への嫌がらせがエスカレートして、業務に支障が出ないともないとも限らない。

「だからさ、あの子のこと怒らせると面倒じゃない。あれ、響子……?」

 ジョッキを片手に視線を向かいの席に戻すと、響子はテーブルに肘をついてスースー寝息を立てていた。