グレープフルーツを食べなさい

「だって……、いや、やっぱりなんでもない」

 私は片手を振って誤魔化した。

「俺今日直帰だから、出先からそのまま寄ります」

「ん、わかった」

「じゃあ」

 それだけ言うと、上村はすぐに出て行った。

 今夜、上村が来る。食事を当てにされているだけなのに、どうしても心が浮き立ってしまう。

「こんなことやってる場合じゃない。さあ、仕事」

 なんとか頭の中を仕事一色に切り替えて、私は給湯室を後にした。