グレープフルーツを食べなさい

「祥子さん、違うんです。私と上村くんは本当はそういう関係じゃなくて……」

「え? そうなの」

「本当です。それなのに私ったら全部お話聞いてしまって、本当にごめんなさい」

 頭を下げる私に驚いたのは一瞬で、祥子さんはすぐに顎に手をあて「うーん」と考え込んでしまった。

「本当に、そうなのかなあ?」

「え?」

 今度は私の方が驚く番だった。しかし祥子さんは首を傾げ、まだ考え込んでいる。

「だって香奈さんと一緒にいた時の達哉、香奈さんのことが心配で仕方ないって感じだったわよ」

「それは……たぶん同情だと思います。かっての自分と同じように、病気の母親を抱える私への同情っていうか……」

 祥子さんの話を聞いた今となっては、最早それは確信に近い。

 あの夜のことだってそうだ。かつての自分と同じように、家族を失いかけている私のことを放っておけなかっただけだろう。上村が普段隠している、彼本来の優しさには私だってとっくに気がついている。