グレープフルーツを食べなさい

「お待たせ、拓海。ママちょっとこのお姉さんとお話があるから、あっちでジュース飲んで待っててくれる?」

「わかった! 僕、サイダーがいい」

「炭酸はだめよ。フルーツジュースにして」

「えー」

 ほっぺたを膨らませて、体全体で土井さんに抗議する拓海くんがかわいらしい。上村にもあんな頃があったんだろうか。

 結局は土井さんの方が折れて、拓海くんはフルーツサイダーの缶を手に大喜びで中庭のベンチの方へに駆けていった。

「もうっ、拓海! そんなにはしゃぐと転ぶわよー」

「だいじょうぶー」

 拓海くんは一度立ち止まり、私たちに向かって大きく手を振ると、再び中庭に向かって走って行った。

「拓海くん、かわいいですね」

「元気すぎて、ついていけない時もあるけどね」

 中庭に着きベンチに腰掛けると、土井さんは夏の花々が咲く花壇の周りを走り回る拓海くんを愛しげに見つめた。