グレープフルーツを食べなさい

 母の病室を出て、一階にある待合室へと向かう。すでに受付もクロークも閉じられていて、フロアの照明はほとんどが落されていた。

 周りを注意深く見回しながら奥の方に歩いて行くと、待合室の一番奥、白っぽい光を放つ自動販売機の前に、缶コーヒーを持った土井さんが立っていた。

 纏めていた髪を下ろして、ナース姿の時とはまた違った印象だ。肩下まである、緩いウエーブのかかった髪が、鼻筋の通った、すっきりとした顔立ちにほどよい甘さを加えている。

 全体の印象は違うけれど、顔を見れば、やはり上村に似ているな、と思った。

 それにしても、私に何の話があるんだろう。土井さんの姿を見つけて俄かに緊張した私は、いつの間にか手のひらにうっすらと汗をかいていた。

「土井さん、お待たせしてすみません」

「ああ、三谷さん。私も今来たところだから。申し訳ないんだけど、先に託児室に息子を迎えに行ってもいいかしら?」